型枠と植林【本社】
私たちは植林事業のサポーター
東京木工所は、国際緑化推進センターを通じて、東南アジアの国の植林事業を支援している。
過去には、インドネシアの植林事業に当社社員が参加し、現地で植林活動に参加させていただいたり、大規模植林プロジェクトに資金の提供を行い「Tomoku Forest」と名付けていただいたりしたこともあがるが、今は、国際緑化推進センターに当社の株式を持っていただき、毎年配当をする形で植林事業への「寄付」を細長く続けている。
なぜ建築資材の販売会社が植林のサポーターとなったのか
私たちが植林事業を支援する、その理由は「型枠」にある。
「型枠」とは、RC「鉄筋コンクリート」造の建物のコンクリートを流し込んで固めるため枠材のことだ。型枠は物件や部位により転用されるが、何度もコンクリートの打設を経た型枠は表面や角がボロボロになり、それ以上転用することができなくなる時が来る。すると、使い終わった型枠は廃木材(木くず)となり処分される。つまり、型枠は木造建築物の構造材のように何十年も躯体として存在し続けるものではない仮の枠…仮設材なのだ。そして、その材料となるベニヤ、合板(コンパネ=コンクリートパネルと呼ばれることが多い)の主な原木産地は東南アジア(インドネシア、マレーシア)の熱帯雨林。「型枠」は、その用途から数多の「熱帯雨林」を短期間で木くずに(使い捨て)していることになり、そのことについて環境団体から、「環境破壊」の一因とご指摘を受けることになる。
その点だけを切り取ると、木の型枠資材を販売している私たちは、限られた自然環境の使い捨てを促している人たちということになってしまう。でも、木材を取扱うことで成長の歴史を歩んできた当社にとって、木を活かし、木に活かされる仕事に誇りを持って向き合い続けたい。そこで木を使うことと共に再生することにも少しでも関りたいという思いから、東京木工所は植林事業のサポーターになったのだ。
ではRCは不要なのだろうか
「コンクリートから人へ」。2009年に政権交代を果たした民主党が掲げたスローガンを覚えていらっしゃるだろうか?(個人的にはこのスローガンによって、コンクリートやRC造が、そのイメージを著しく損ねる形で固定されてしまったと悲しい思いを抱いておりますが…)今や時代は確実に「木化」である。2010(平成22)年には、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が、2021(令和3)年10月1日には、「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行された。官民ともに木造化への流れが加速し、RC造が得意とする低/中層の建物もますます木造で建てられるようになっている。そのような環境変化を目の当たりにし、RC造はもはや必要ないのだろうか?RC造にできることは本当にないのだろうか?との懸念が脳裏をよぎる。いや…そうではないはずだ。
私たちは、建設現場を材料の側面からサポートし、モノづくりに貢献したいという思いを持って、建築資材の販売をしている。中でもRC造の建物に携わる者としては、特に2011年3月の東日本大震災後、建物が命の安全・安心を守る空間であることの重要性を改めて痛感し、RC造にしかできないことがあると考える。むろん全ての建物がRC造でなければならないという意味ではない。しかしながら燃えない、倒れないことはもちろんのこと、流されないことが必須の条件となることを、昨今の地球温暖化に伴う自然災害の猛威は示している。つまり、建物として存在し続けることが絶対的に必要となるケースがあるということだ。その時こそRC造の出番である。立地や目的など、その時々の条件に応じて一番ふさわしい構造を選ぶなら、木造が最適なケースがあるのと同じようにRC造が最適なケースもあるはず。更に、「オールオアナッシング」ではなく「あれもこれも」の発想でいけば、木造・RC造のいいとこ取りで建物の価値もより一層高められる。最近では、低層部分がRC造で、中層が木造で建てられた物件も珍しくない。またCLT(Cross Laminated Timber)を脱型しない型枠材として用いることで、躯体はRC造でCLTがそのまま仕上げ材として活用されるといった建築方法もすでに登場している。
木をより良く活かすという考え方について
木を育てる植林事業にはサポーターとして関わる私たちだが、木を活かすことについては販売に留まらずもう少し踏み込んで関わってきた。「型枠=使い捨て」のイメージを少しでも払拭するために、東京木工所では使い終わった型枠を引き受けてチップ化する中間処理業も営んでいる。スタートは1992(平成4)年、岩槻工場から。木くず(廃木材)を中間処理する許認可を取得し、納材した工務店さんから型枠廃材を受け入れて粉砕、チップ化し、そのチップを再生ボード(パーチクルボード)の原料や、バイオマス発電所の燃料として販売している。型枠として一度その役割を終えた木材は、形を変え新たな価値を持ってリサイクルされる。再生ボード向けはマテリアルリサイクル、バイオマス発電所向けはサーマルリサイクルだ。木くずは廃棄されるゴミではなく、資源となり再び活躍する。建設業界もできる木のカスケード利用。木をより良く活かすために、私たちはこれからも取り組んでいく。
小さな一歩に思いを込めて
私たちは「木」をより良く使うことを考えながら、「木と共に」ある事業を1924年から紡いできた。その時々の時代背景や環境に合わせて事業の形を変えながらも、細く長く木に寄り添いここまで来た。
しかし、ただ一つ「木」の命を育むプロセスには、事業として関わることができておらず、残念ながら、長い年月を経て成長した木と出会うことしかできていないのが現状である。
今、日本の山は戦後造林され、伐期を迎えた木々が沢山ある。それらの木と出会い、少しでも多く、より良く活かされることに私たちは携わりたいと思う。木をより良く活かすことにより、新しい一本の命を育むのに十分な資金が山に還元されることを、そしてまた何十年もの時を超えて次の世代へその価値のたすきをつなぐことを、その営みが繰り返され資源が循環できるしくみに携わることを目指していきたい。その思いを遂げるには時間がかかるかもしれない。より多くの仲間が必要となるかもしれない。それでも、同じことを考えている人たちと出会い、実現する可能性はある。そう思っている。その中で植林事業のサポーターは、今すぐ私たちでもできる「木」の命と価値を育むプロセスへの関り方。資金と資源の循環への最初の一歩。小さな一歩ではあるが、その先に続く「目指すこと」に向かって、私たちにできることとして誇りを持って続けていきたい。