【No.299】どうなる日経平均…どう変わる安いニッポン…堅調な中長期

海外投資家による日本株買いの勢いが鈍ってきた。利上げが進む欧米や中国リスクを避けたマネーが押し寄せたのは6月まで。株価が低位だった「安いニッポン」への買いが一巡すると、株高も足踏みとなっている。ここからは新たな買いの波を呼び込めるかは、賃金が持続して上がり、企業の利益率が上昇する「高くなるニッポン」に変身出来るかがカギとなる。米国株は割高で欧州は高インフレに苦しむ。株価がまだ低位で先進国であまり問題を抱えていない日本株が選択対象になっている。ただしそれには長期投資家の動きがカギとなる。「日本に変化が出てくればそれに合わせた投資資金が増える」と関心をもって見ている。マクロで賃金上昇が構造的に続く流れになるのか、ミクロでは企業の経営改革が本当に資本効率を高めるかがだ。今年の春闘で賃上げ率は3%超と約30年ぶりの高さとなった。来春も続くかが次のハードルだ。賃金を上げ続けなければならない前提になれば企業の価格戦略もおのずと変わってくる。そのために経営資源も集中させる。インフレを前提にした歯車が動き出せば、収益率の向上という循環が起こり得る。店舗数の勝負から、より付加価値の高い商品戦略へ切り替えつつあるコンビニ。客数を押さえても入場料を上げる戦略をとったオリエンタルランド。変化の芽はある。23年4から6月期の連結純利益が全同期比55%増となったニデック。永守会長CEOの説明もこれだけの利益が出たのは技術革新。値上げだけではない、両方だ。株価が安さだけなら去る足も速い。賃金や利益率が高くなるニッポンとして評価を得ることで、長くいるほど株式価格が上がると期待が持てる市場になることが大事だ。それがバブル最高値を突き抜けるための条件になる。

中国が新型コロナウイルス禍後、経済再開にもたつき米中対立も激化するなか、海外投資家がアジアに向けて日本の重要性を高めている。しかしそれだけではない。積年の課題であった日本経済の構造変化が起き始めているからだ。日本国内では、

  1. 賃金上昇を伴う穏やかなインフレが定着する兆しが出ている。インフレで企業の収益が伸びれば、名目値である株価は上がりやすくなる。
  2. コーポレートガバナンス(企業統治)の改善も見逃せない。以前メインバンクや取引先の持ち合い安定株主で一般投資家は後回しだったが、今や株主総会で株主提案は当たり前、企業によって株主との対話を変革のきっかけにするしたたかさも持ち始めている。自社株買いや配当など還元も拡大傾向だ。
  3. 肝心の日本企業の稼ぐ力も着実に上がっている。コロナ禍を乗り越え、デジタル・トランスフォーメーション(DX)などの改革を加速。コロナ前を上回る収益力を身に着けた企業も少なくない。
  4. 東証も自己改革を急ぐ。23年3月に上場企業に対して、資本効率改善や株主価値向上の具体策を打ち出すよう要請した。

「海外投資家が日本に戻り、デフレ脱却で企業の利益率があがれば、日経平均最高値3万8,915円の更新も時間の問題と分析される。企業、投資家、東証。世界マネーが日本に注目する絶好機に、多くのステークホルダーの目の色が変わり始めた。国立社会保障・人口問題研究所によれば、70年に日本の人口は現在の約7割に縮小、経済成長は一段と難しくなる。日本経済がバブル期以来の本質的な復活を果たせるか、残された時間は長くはない。目の前にある「最後のチャンス」をもはや見逃すわけにはいかない。

中長期の景気循環は日本株の長期上昇を示唆している。賃金改善の理由が物価動向とする事業所の比率は、21年度7.7%から23年は57.5%と急上昇している。法人企業統計の景気予測は今後3年(23~25年)の設備投資が年率6.36%の増加と見込まれている。加えて機械、建設、インフラ投資の更新需要が強い局面にある。仮に20年3月の株価の安値を起点に、前回の11年から17年にかけての株価上昇率2.4倍を準用すると、今回の株価は4万円半ばとなる。欧米の金融引き締めや銀行問題など世界的な金融市場の動揺が懸念されるが、中長期的な日本経済の堅調さが支えるかたちで、日本株の上昇が続くことが期待される。

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